Dostoevsky 'Brothers of Karamazov'First volume 12
(ミウーソフ)「ほかならぬイワン君に関するきわめて興味深い、この上なく特徴的な話を、みなさんにご披露しましょう。つい4,5日前のことですが、この町の主として上流婦人を中心とする集まりで、この人は議論の中で得々としてこんなことを明言したんですよ。つまり、この地上には人間にその同類への愛を強いるようなものなど何一つないし、人間が人類を愛さねばならぬという自然の法則などまったく存在しない。かりに地上に愛があり、現在まで存在したとしても、それは自然の法則によるのではなく、もっぱら人間が自分の不死を信じていたからにすぎないのだ。その際イワン君が括弧つきで言い添えたことですが、これこそ自然の法則のすべてなのだから、人類のいだいている不死への信仰を根絶してしまえば、とたんに愛だけではなく、現在の生活をつづけようという生命力さえ枯れつきてしまうのだそうです。それどころか、そうなればもう不道徳なことなど何一つなくなって、すべてが、人肉食いさえもが許されるのです。……『本当にななたは、不死という信仰が人間から枯渇した場合について、そういう信念を持っておられすのですか?』ふいに長老がイワンにたずねた。『ええ、僕はそう主張してきました。不死がなければ、善もないのです』『もしそう信じておられるのなら、あなたはこの上なく幸せか、さもなければ非常に不幸なお人ですの!』」(p166~167)
非常に大切な議論をしている。人類は神も仏も不死さえ信じなければ、歯止めとなるものはなくなり、イワンの言う世ように人肉さえ食べることもありうるかもしれない。恐ろしいことだ。
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