Heikemonogatari 4 Yuminagashi
Yuminagashi弓流
あまりの面白さに、感にたへざるにやとおぼしくて、舟のうちより、とし五十ばかりなる男の、黒革をどしの鎧着て、白柄の長刀持ったるが、扇立てたりける処に立って舞ひしまたり。……其なかに判官と伊勢三郎はねざりけり。判官はたかき所にのぼりあがって、敵やよするととほ見し給へば、伊勢三郎は、くぼき処にかくれゐて、かたきよせば、まづ馬の腹射んとてまちかけたり。……夜討にだにもしたらば、源氏なにかあらまし。よせざりけるこそ、せめての運のきはめなれ。(p168~174)
義経は平家が夜討する可能性もあると見て、一睡もせず高い所からじっと見ていた。一方、伊勢三郎はくぼ地にかくれて、もし平家がよせてくればただ一人、平家の馬を弓で射ようと待ち構えていた。しかし、平家は奇襲作戦を取らなかった。それが勝敗の分かれ道になったのだろう。
弓流とは、屋島の合戦の際、源義経が自分が海中に落としてしまった弱い弓を、自らの名誉のために敵と戦いながら拾い上げたという故事。
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